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飲食店を経営するうえで欠かせないのが、パートやアルバイトを含む従業員の存在です。しかし同時に、人件費は経営に大きな影響を与える経費のひとつであり、効率的に利益をあげるためにできる限り人件費は抑えたいもの。
そこで今回は、飲食店における人件費の考え方や適正な数値の目安を解説するとともに、人件費を抑えて経営を効率化するための方法もあわせてご紹介します。
まずは人件費についての基本的な内容と人件費を適切に管理することの重要性について解説します。
人件費とは、店舗で雇っている従業員に支払われる報酬の総量を指します。基本給や残業手当はもちろんですが、その他にも社会保険料や通勤手当など、従業員を雇ううえで必要なコストを全て含めて人件費とよびます。
売り上げ金の中から捻出される経費のうち、人件費は家賃や原材料費と並んで大きな割合を占めます。
従業員の雇用形態や稼働時間によって異なりますが、1人の従業員を雇うことで月に数十万円単位の費用がかかります。そのため、売り上げと労働力のバランスや生産性を適切に管理することが重要です。業務量が多く人手が足りないからといって安易に従業員の数を増やしてしまうと、人件費が経営を圧迫し、十分な利益が確保できません。
人件費を管理するうえでは、業務フローの見直しや業務効率化、シフトの調整を検討したうえで、それでも難しい場合に初めて従業員の増員などの対策を講じる必要があるでしょう。
人件費を適切に管理するためには、さまざまな指標や算出根拠を把握しておく必要があります。そこで、最低限覚えておくべき基本的な指標や、人件費の算出方法について詳しく解説します。
飲食店の経営においてもっとも重要な指標となるのが「FLコスト」とよばれるものです。Fは「Food=食材」、Lは「Labor=労働」を意味し、FLコストとはすなわち「食材費と人件費を合わせたコスト」を示す指標です。
飲食店のなかでも提供する料理のジャンルや回転率、単価によって、最適なFLコストの値は異なります。
営業利益とは売り上げから経費を差し引き、利益として残った金額のことを指します。FLコストの他に家賃や光熱費、その他雑費等、あらゆる経費を売り上げから差し引いて計算することで、お店がどれだけ利益を上げられているかが確認できます。
人事売上高とは、従業員が1時間あたりに得る売り上げ高を算出したものです。「売上高/全従業員の労働時間」によって算出でき、4,000円以上になるのが望ましいとされています。
この数値が高い方が生産性は優れていると言えますが、高ければ高いほどよいというわけではありません。高すぎる場合は、顧客満足を得られるようなサービスが伴っているか確認する必要があります。
店舗の売り上げを把握したうえで人事売上高の目標値を設定し、そこから逆算してシフトの調整を行う方法も効果的です。
労働生産性は、従業員1人あたりがどれだけの利益を生み出すかを示す指標です。「粗利/従業員数」によって算出し、50万円以上であることが目安になります。ちなみに「粗利」とは売上高から原価を差し引いたもので、「売上総利益」とよぶこともあります。
時間帯売上とは、営業時間帯を一定の間隔で区切ったときの、時間帯別の売り上げを表す指標です。適切な人件費管理を行うには、時間帯売上をもとに適切な人数の従業員を配置し、混雑時の人員不足やスロー営業時の人員の余剰を防ぐ必要があります。
労働分配率とは、売上高から原価を差し引いた粗利のうち、どれくらいの割合を人件費に割いているかを表す指標で、「人件費/粗利」によって算出します。例えば総売上が100万円、原価が30万円だった場合、粗利は70万円になります。このなかから人件費として28万円を支払うと、労働分配率は40%になります。
店舗の売り上げから、より効率的に利益を生み出すためには、コスト削減への取り組みが必要です。場合によっては人件費を削減せざるを得ないケースも出てくるでしょう。そこで、人件費はどの程度の比率が適切なのかを詳しく解説します。
提供する料理のジャンルや店舗形態、回転率によって適切な利益率は異なりますが、一般的に原材料費は総売上高に対して30%前後が良いとされています。70%の粗利が残ると、そこから家賃や人件費、その他経費を支払いつつもゆとりのある経営ができるのです。
原材料費と人件費を合算したFLコストも、店舗形態や回転率によって適正値が異なります。一般的なレストランの場合は、原価率が30%、人件費も30%弱が適正範囲と言われ、総売上高に対してFLコストがおよそ60%になるのが望ましいとされています。
より効率的に利益を上げるため、人件費を少しでも抑制したいと考えている経営者も多いのではないでしょうか。従業員との関係をできるだけ良好に保ちながら、効果的に人件費を抑制する方法を4つご紹介します。
パートやアルバイトとして働く従業員にとって、毎月のシフトは収入を大きく左右する重要なものです。しかし、来客数が少ないと見込まれる時間帯に多くの従業員を投入することは非効率的であり、シフト作成においては必ずしも従業員の希望に添えるとは限りません。
人件費と売り上げのバランスを保つには、人時売上高や時間帯売上などのデータを根拠にシフトを作成する必要があります。
仮に従業員の希望したシフトを削らなくてはいけない場合でも、明確な根拠をもって説明できることが信頼関係の維持にもつながります。
例えば数週間前から予約が入っていた大口の宴会のキャンセルというように、飲食店では急なスケジュール変更を迫られることも少なくありません。そのような場合は従業員に相談してシフト変更をするなど、柔軟に対応しましょう。
必要なときに必要な人員を適切に配置することによって、人件費を減らしたり労働生産性をアップさせることにつながります。
業務に慣れない新人アルバイトやパートの場合、業務内容を教えるために先輩従業員の勤務時間を割かなければいけないケースが考えられます。教育にかける時間が長くなるとその分通常の業務に対応できず、結果として人件費が膨らむ要因にもなります。
こうした問題を解消するため、あらかじめ業務マニュアルを作成しておくことが有効です。
例えば、最初の数日間はマニュアルと実際の様子を見ながら業務を覚えてもらい、分からないことを随時質問してもらう体制をとっておけば、教育にかける人件費が最小限で済みます。
従来のフロー通りに日々の業務を行うのではなく、オペレーションを積極的に改善することも、人件費を削減するのに効果的です。
注文を受ける際のフローや調理の手順、担当人員数の見直しなど、あらゆる視点からオペレーションを改善することによって、給与や従業員数を変化させなくても生産性を高めることができます。
人件費の抑制と聞くとネガティブなイメージをもたれることも多いため、従業員に納得してもらったうえで協力を得る必要があります。人件費を管理するうえで注意すべきポイントを解説します。
まずは当初想定していた売り上げや人件費と、実績としての売り上げや人件費を比較してみましょう。予算と実績の差を認識することで、翌月からの予定値を変更したり、業務改善をしたりと、さまざまな対策を講じることができます。
人件費を削減するとなると、従業員のモチベーションの低下や、それに伴う売り上げ低下によって悪循環に陥る可能性もあります。モチベーション維持には、特別な施策や交渉が必要と考えられがちですが、前向きな姿勢で従業員に相談してみるのも有効です。
また、経営の改善に一丸となって取り組めるよう、一定の目標をクリアしたらボーナスを支給するなど、従業員のインセンティブになる施策も提案してみると良いでしょう。
特定の従業員に業務が集中していないか、または担当する業務量が少なくなっていないかを確認し、必要に応じて業務量を調整しましょう。
業務量が偏っていると、例えば主力のメンバーが抜けた場合に対応できず、さらに新たな従業員を迎え入れなければならなくなります。また、従業員のモチベーション管理という面でも業務負荷の調整は重要です。
せっかく新たなアルバイトやパートを迎え入れたにもかかわらず、従業員の質が悪いと採用コストばかりがかさんでしまいます。
また、人の入れ替わりが激しい店舗は必ずしも従業員側に問題があるとも限らず、店舗の労働環境に原因があるケースも少なくありません。採用活動はもちろんですが、その後の育成指導の体制もしっかりと確保しておく必要があります。
飲食店における人件費は、給与や各種手当て、社会保険も含むコストの総量であり、収益に大きな影響を与えます。そのため、今回紹介してきたFL比率や労働生産性、労働分配率といった指標をもとに、適切な範囲に人件費を抑える必要があります。
人件費を抑えるためにはシフトの調整やオペレーション改善などさまざまな方法がありますが、同時に従業員のケアも欠かせません。
従業員と店舗オーナーがお互いに納得したうえで良好な関係を維持するためにも、今回紹介したような具体的対策を講じてみてはいかがでしょうか。
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