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個人事業主になると、誰もが頭を悩ませることになるのが確定申告ではないでしょうか。確定申告という言葉は聞いたことがあるものの、実際に何を行えば良いのかということについては意外と知らない人が多いです。個人事業主として生活するのであれば、確定申告の概要や手順についてはしっかりと理解しておかなければなりません。以下では個人事業主の確定申告について詳しく解説していきます。
個人事業主になると、自分で確定申告を行う必要があります。会社員であれば、その大部分を会社が負担して行ってくれますので、確定申告についての知識がある方は少ないかもしれませんが、なんとなくその言葉だけは知っているという方は多いのではないでしょうか。
個人事業主は年に1度、1月1日から12月31日までの所得を計算して税務署に報告し、納付する所得税などの税金を確定する必要があります。この納付すべき税金を確定させる手続きのことを確定申告といいます。確定申告では、その1年分の所得を計算し、様々な書類も準備する必要があるために、苦手意識を持っている方も多いようです。
しかし、確定申告には面倒であるというデメリットだけではなく、場合によっては納めすぎた税金が戻ってくる還付金があるなどのメリットもあります。
まずは、どのような場合に確定申告が必要なのかを見ていきましょう。個人事業主であれば必ず確定申告をしなければいけないというわけではありません。具体的にどのような方が確定申告を行う必要があるのかについて解説します。
確定申告が必要なケース |
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上記のような方は確定申告を行う必要があります。ただし、個人事業主として開業していたとしても、決算上で赤字になっている場合は、税金計算のベースとなる所得がないということになるので、確定申告をする必要はありません。
ただし青色申告であれば、赤字を3年間にわたって繰り越しできるので、翌年以降に黒字化した場合に節税できます。確定申告を行わない場合はこのメリットが受けられなくなるので、可能であれば赤字の場合でも確定申告をしておいたほうがよいでしょう。
また、確定申告と似た言葉に、年末調整があります。2つの言葉の意味について解説します。
確定申告とは1年間の所得から所得税を計算し、その金額を税務署に申告することです。すでに述べたように、会社員であれば、会社が代わりに申告してくれるので、基本的には自分自身で申告する必要はありません。個人事業主であれば原則的に自分で1月1日〜12月31日の所得と納める税金を計算し、翌年の2月16日〜3月15日の間に税務署に申告しなければなりません。
次に年末調整について説明します。会社では、毎月の給与の支払い時に大まかな税額を天引きしています。これを「源泉徴収」と呼びます。ただし、あくまで徴収される金額は概算されたものなので、本来納めるべき税額とは差分が生じます。そして、1年間の給与が確定する年末に、各種の控除を踏まえて再計算し、払いすぎている税金に対しては還付金を支給し、足りない分に関しては追加徴収を行うことになります。この再計算の手続きを年末調整と呼びます。
確定申告と年末調整は混同されやすいですが、このような違いがありますので押さえておくようにしましょう。
確定申告がどのような制度か理解したら、実際の申告の手続きについても知っておきましょう。確定申告をする前には、必要書類を準備しておかなければなりません。申告の方法には「青色申告」と「白色申告」の2つがあります。どちらを選ぶかによって用意しておくべき書類は異なるので注意が必要です。
以下では、それぞれの申告方法で必要になる書類について解説していきます。
青色申告は、日々の取引を複式簿記(または簡易簿記)のルールに沿って帳簿に記録しておき、記録した帳簿をもとに確定申告を行う制度です。
白色申告と比べて帳簿を付ける手間が大きい分、最大65万円の控除が受けられるという特典があります。なお、青色申告による特典を受けるには、事前に届け出をしておく必要があります。青色申告をおこなう年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提示する必要がありますので注意しましょう。
青色申告を行う場合に必要になる書類は以下になります。
青色申告に必要な書類 | 概要 |
確定申告書B | 確定申告書にはAとBがありますが、個人事業主の方が提出する必要があるのは確定申告書Bになります。収入金額、所得金額、各控除の金額、税金の金額などを記入する書類です。 |
青色申告決算書 | 全4枚からなる、収入や売上原価、経費の内訳を示す書類のことです。「損益計算書」「貸借対照表」「製造原価計算書」などの書類の作成をするため、簿記の知識が必要になります。 |
所得控除を受けるための控除証明書(レシートや領収書) | レシートや領収書など、各種控除を受ける際には証明書が必要になります。なくしてしまわないように保管しておきましょう。 |
源泉徴収票(給与所得などがあった場合) | 会社から配られる、1年間の給与と所得税が記載された書類です。給与所得のない個人事業主であれば、提出は不要です。サラリーマンで副業をしている場合など、給与所得がある方は提出する必要があります。 |
青色申告を行う場合は、これらの書類を準備しておきましょう。
青色申告以外の確定申告のことを白色申告といいます。白色申告で必要になる書類は以下の通りです。
白色申告に必要な書類 | 概要 |
確定申告書B | 青色申告と同じ |
収支内訳書 | 全2枚からなる、収入や経費、減価償却資産について記入する書類のことです。青色申告の「青色申告決算書」よりも記入項目が少ないのが特長です。収支内訳書には「一般用」と「農業所得用」、「不動産所得用」の3種類がありますが、事業所得では「一般用」を使用することになります。 |
所得控除を受けるための控除証明書(レシートや領収書) | 青色申告と同じ |
源泉徴収票(給与所得などがあった場合) | 青色申告と同じ |
とくに注意する必要があるのは、青色申告では「青色申告決算書」を提出する必要があるのに対して、白色申告では「収支内訳書」を提出することでしょう。
青色申告決算書は提出書類が4枚あるのに対して、収支内訳書は2枚となっています。記載内容に関しても、青色申告決算書では「貸借対照表」や「製造原価計算書」などを作成する必要がありますが、収支内訳書ではその必要がありません。
このように、青色申告と白色申告とでは提出する書類やその記載内容が異なりますので、覚えておきましょう。
この他にも、確定申告で控除を受ける場合には控除の事実を証明するために様々な書類を用意しておく必要があります。以下にその書類の代表的なものを記載していきます。
年間の医療費から保険金などの補填分を差し引いた額が10万円を超えた場合には、医療費控除を受けることが可能です。ただし年間の総所得が200万円以下の場合は、総所得の5%を超えた分について控除を受けられます。
こちらの控除を受けるには、医療費控除の明細書を入手し、記入しなければなりません。この明細書は国税庁のサイトからダウンロードが可能ですので、申告するまでに入手するようにしましょう。また、実際に診断を受けた病院の領収書なども必要になりますのでなくさないようにしましょう。
参考:医療費控除の準備|国税庁
生命保険や地震保険、社会保険に加入している方は控除を受けることができます。通常は、加入している保険会社より送付される「保険料控除証明書」の内容を確定申告書に記入して、原本を添付した状態で提出する必要があります。
国民年金保険や国民健康保険に加入している場合、保険料の合計額を社会保険料として申告することで控除が受けられます。国民年金保険の場合は、「国民年金保険料控除証明書」という書類が日本年金機構から送付されますので、そちらに記載されている内容を確定申告書に記入して原本を添付する必要があります。なお、国民健康保険料については、納付証明書の添付は必要ないので覚えておきましょう。
これらの他にも、ふるさと納税の寄附金控除や災害・盗難を受けた時の控除、住宅ローンの控除など、様々な控除を受ける場合にはそれぞれ必要になる書類がありますので、よく確認するようにしましょう。
個人事業主の確定申告と納税は、大まかに言うと、「帳簿や領収書などの書類の準備」「申告書などの作成」「税務署への申告書の提出」「税金の納付・還付」という流れで進んでいきます。
申告期限日が土曜日、日曜日、祝日等と重なった場合は翌平日が期限となります。また、消費税や住民税など、税金ごとに納税期日が異なるので、注意しましょう。
個人事業主であれば、事業所得が年間38万円以下などの例外をのぞいて基本的には確定申告を行う必要があります。確定申告をわざと行わないで税金を軽くする「無申告」とみなされれば脱税行為とされ、様々な罰則を受ける可能性があります。以下では確定申告を行うべき人が申告を怠った場合のペナルティについて解説していきます。
本来納めるべき税額に加えて、税額に応じた罰金を支払うものとして無申告加算税があります。基本的には50万円までには15%、それを超える部分には20%の割合を乗じて計算した金額が罰金となります。ただ、税務署による調査を受ける前に自主的に申告を行った場合には、課税割合が5%まで軽減される場合があります。
延滞税は、税金が期限内に納付されなかった場合に発生する税金です。期限後に申告をした場合は、法定納期限の翌日から申告書を提出する日までの日数に応じ、延滞税が課されます。納期限の翌日から2か月を経過するまでは原則7.3%、2か月を経過した後は原則として14.6%の延滞税が課されます。
この他にも、所得を少なく申告したりするなどの不正を行った場合には、「ほ税」と呼ばれる犯罪行為とみなされることもあります。ほ税行為を行った場合には、上記の2つの税金に加えて税額の35~40%の「重加算税」が課されます。また、悪質な場合には刑事罰に問われることもありますので絶対に申告の偽装は行わないようにしましょう。
参考:加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし|国税庁・国税局・税務署
所得税の対象となるのは1年間に得た所得ですが、その所得というのは収入金額そのものをさすわけではなく、経費と各種の控除を引いた金額が所得になります。控除と同じく所得から差し引けるものが必要経費になりますが、確定申告における必要経費の取り扱いには注意する必要があります。
必要経費といっても、全ての項目が経費として計上できるわけではありません。まずは必要経費として算入できるものを紹介します。
必要経費に算入できる項目例 |
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次は必要経費として算入できないものについて解説していきます。以下のものは必要経費に算入できませんのであらかじめ把握しておきましょう。
必要経費に算入できない項目例 |
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1つの支出がプライベート上と業務上の両方に関わりがある場合は、全額が経費計上できるわけではありません。取引の記録などに基づいて、業務遂行上必要であったことが明らかな金額に限って必要経費として計上できます。具体的には、交際費、接待費、地代、家賃、水道光熱費などがあります。とくに自宅が事務所を兼ねている個人事業主の方は、家賃や水光熱費から、事業運営に必要な金額を按分して申告する必要があるので、忘れないようにしましょう。
経費を計上する際には必要経費の算入時期についてもよく理解しておかなければなりません。国税庁によると、必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額と明記されています。
ここで注意したいのは、たとえ「その年に支払っていたとしても、債務が確定していないもの」はその年の経費にはならず、反対に「まだ支払っていない場合でもその年に債務が確定しているもの」は必要経費となることです。ここで言う「債務が確定している」ということは、以下の3要件を全て満たしている場合になります。
債務が確定するための要件 |
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必要経費となるものは、これらの要件が全て満たされている必要がありますので、注意が必要です。
参考:No.2210 やさしい必要経費の知識|所得税|国税庁
確定申告はかなり複雑な手続きや多くの書類が必要になってくるため、前もって準備をしておくことが非常に大切です。確定申告の期限が近づいてくると、税務署に多くの人が押し寄せることもあります。期限の直前に提出しようとすると、間に合わない可能性もありますので、余裕をもって手続きを行うようにしましょう。
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