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これから独立しようとされている方や事業を始めようとされている方は、事業を個人事業主として始めるのか、それとも会社設立して始めるのか悩まれる方も多いのではないでしょうか。個人事業主であれば開業届を提出することで比較的簡単に開業することができますが、会社を設立する場合には定款を作成したりその他にも様々な手続きが必要になるため、手間がかかります。
独立する業種や、開業される方によって状況もさまざまですので一概にどちらの方が良いというわけではありません。しかし、煩雑な手続きが必要になるため、会社を設立するとどのようなメリット・デメリットがあるのかについては事前に把握しておく方が良いでしょう。以下では会社を設立するメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。これから独立して会社を設立しようか悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。
個人事業主としてではなく会社を設立して独立するには手続きに時間がかかりますが、その分さまざまなメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのかについて、以下で解説していきます。
会社を設立することで得られる大きなメリットの一つは、やはり信用力を獲得できることでしょう。法人というだけで営業をする際にも取引先の印象が大きく変わります。もちろん、個人事業主であれば全てのケースにおいて会社よりも信頼が劣るわけではありません。個人の能力が高く、過去の経営実績などが優秀であれば、取引先や金融機関からも信頼を得ることはできます。しかし、もし同じ業種であればやはり会社を設立している方が有利に働くことも多いですので、信用力を獲得したいという方であれば会社を設立することを検討された方が良いかもしれません。
会社を設立して独立する場合と個人事業主として開業する場合では、税金面で大きく差が出ます。個人事業主であれば所得が高くなるほど税率が上がっていく「累進課税率」が採用されているため、所得が上がるほど税負担も大きくなります。それに対して法人が支払うべき法人税は利益が増えても税率がある程度固定されているため、一定の所得を超えると法人の方が税率が低くなることがあるのです。
また、個人でも法人でも、2年前(法人の場合は2年前の事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えた場合には消費税の納税義務が発生します。ただし、個人事業主が法人化した場合、2つは別人格とみなされるので、新たに2年間がカウントされはじめます。つまり、消費税を支払うべきタイミングで法人化すれば約2年間分の節税を行うことも可能なのです。
その他にも法人であれば損金として計上できるものも多く、青色申告を行うことで赤字を繰り越せる年数も多いです。このように、個人事業主として開業するよりも会社を設立した方が節税対策の面でメリットがあることが多いということは、あらかじめ把握しておくようにしましょう。
会社を設立するメリットとしては、他にも事業の規模を拡大しやすいことなどが挙げられます。法人であれば信用力が高まることは先ほどお話しした通りですが、人材確保の面でも会社の方が有利です。やはり、従業員として働く場合でも、個人事業主の元で働くよりも信用力の高い法人で働きたいと思われる方が多いです。そのため会社を設立した方が優秀な人材が集まりやすく、それだけ事業を拡大する上で有利になります。
その他にも、資金調達の面で個人事業主よりも融資を受けやすいということも大きなメリットです。融資する側が最も重視するのは、相手に返済能力があるかどうかです。法人の場合は損益計算書と貸借対照表を作成する必要があるので、銀行側も明確に判断をすることができます。一方で個人事業主の場合、家計と事業の区別が難しく、いくら融資すればよいのかが不透明なため、融資金額も小さくなりやすい傾向があります。このように、様々な面で事業の拡大をしやすいことも会社を設立するメリットであると言えます。
上記では会社を設立するメリットについてお話ししましたが、もちろん良いことばかりではなくデメリットも存在しています。以下では具体的にどのようなデメリットがあるのかについて詳しく解説していきます。
個人事業主であれば開業するために開業届を提出するだけで良いため、開業においての費用は必要になりません。しかし、会社を設立する際には個人事業主と違って様々な費用が掛かります。株式会社を設立する場合には登記が必要になりますが、これには最低でも20万円ほどのコストが掛かるのです。その他、出資金の用意も必要になりますが、現在では出資金は1円からでも会社設立は可能になっています。
会社を設立すると厚生年金や健康保険といった社会保険への加入が義務となります。個人事業主であれば基本的に国民健康保険と国民年金に加入する必要がありますが、法人の加入する社会保険料は個人事業主と比べて高額になるため、費用の面ではデメリットとなります。ただし厚生年金は国民年金と比べて、将来受け取る年金の額が多くなるため、一概にデメリットとは言い切れません。
また、法人の場合は従業員を雇えばさらに社会保険料の負担も増えることになります。どれほどのコストが掛かるのかについては、雇用する前にあらかじめ調べておくべきでしょう。
会社を設立した場合には、個人事業主よりも経理の事務作業が増えることになります。
法人税の計算に関しても個人で行うには難易度が高いため、経営者は事業に専念するためにも、専門家である税理士や公認会計士に依頼する必要が出てきます。依頼内容も個人事業主よりも高度になるため、多くの場合が個人事業主よりも法人の方が依頼料が高くなる傾向にあります。
また、上記に述べたような社会保険の処理も増えるため、会社を設立することで事務作業のコストは大幅に増えることは覚えておきましょう。
会社を設立した場合は、たとえ事業が赤字であったとしても法人住民税の均等割を支払わなくてはなりません。個人事業主であれば事業が赤字のときは住民税や所得税は免除されるので、この点は大きな違いです。
もし、まだ個人事業主としての事業が軌道に乗っておらずどれほどの利益が出るか分からないという場合であれば、現業でしっかりと利益を出すことができるようになってから法人を設立する方が得策であると言えます。
会社を設立して事業を始めようと思っても、何から始めれば良いのか分からない方も多いでしょう。あらかじめどのような手続きを行う必要があるのかを理解していれば、会社の設立をスムーズに進めることが可能です。以下では、会社を設立する際の具体的な手続きやその手順について解説していきます。
会社を設立する際には、まず初めに会社の基本事項を定める必要があります。会社の基本事項とは、具体的に言えば定款や登記事項に定める最低限必要な項目のことを表しています。今回は、分かりやすく以下に表にまとめます。
項目 | 詳細 |
会社名 | 会社名は定められた制約の範囲内であれば自由に決めることが可能です。個人事業主の方が法人成りをする場合にはこれまでの取引先やクライアントの混乱を招かないよう、個人事業主の時に使っていた名称を使用し続けた方が良いかもしれません。 |
事業目的 | 事業目的とは、どのようなことをしている会社なのかを表したものです。事業目的に記載されていない事業を行うことは法律上できないため、今は行っていなくとも今後始める事業がある場合などは事前に記載しておく方が良いでしょう。注意すべきなのはあまり多くの事業目的を書きすぎないようにすることです。どの事業を主として行っているのかが分からないと、周囲から不信感をもたれてしまうかもしれません。書きすぎないように気をつけましょう。 |
発起人 | 発起人は会社の設立を発起し、設立のために出資を行う人を表しています。会社の設立後には株主となり、所持する株式に応じて議決権を行使することができたり、配当金を受け取ることになります。 |
本店所在地 | 本店所在地とは、定款や登記事項に定める会社の住所地のことを言います。こちらは事業を実際に行っている場所と一致している必要性はありませんので注意しましょう。 |
資本金 | 「出資者が会社の事業を営むために自ら準備した資金」のことを資本金と言います。株式会社であれば資本金の最低額は1円となっていますが、基本的には3〜6ヶ月ほど純利益が出ない場合でも事業を継続することができる額が目安と言われています。許認可事業である場合には資本金の額があらかじめ規程されていることもありますので注意が必要です。 |
機関設計 | 機関とは、会社の取締役や監査役といった役員、取締役会や株主総会などの「意思決定や運営の権限を持つ役員や組織」のことを言います。それぞれの機関に対して設置人数を決めることを機関設計と呼び、株式会社の場合にはこの機関設計を必ず記載しなければなりません。ただし、合同会社の場合には任意となりますのでその点もおさえておきましょう。 |
決算月や設立日 | 事業年度は法人であれば自由に決定することができます。事業年度が決定すれば、事業年度の最終月の最終日から2ヶ月以内に決算申告を行います。決算月については、繁忙期に設定すると決算業務と本業で忙殺される可能性があるので注意しましょう。 |
定款認証を行う際には発起人の印鑑証明書が必要になります。この印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものである必要があるので事前に用意しておく必要があります。また、この他にも設立の手続きや設立後の業務を行う際には会社印鑑も必要になります。具体的に用意するものとしては、「会社実印(代表者印)」「会社銀行印」「角印(社印)」の3種類と「ゴム印」を最低限準備しておくようにしましょう。事前に余裕を持って準備しておけば、設立の手続きが始まった際にも慌てることがありません。
法人の登記を申請するためにはまず定款が必要になります。定款には会社の基本的な規則を示すことが大切です。定款の作成・認証は以下の手順で行います。
定款の手続きはこのような形になりますので、作成する前に把握しておくようにしましょう。なお、定款の書き方は特に決まっておらず、基本的には文書作成ソフトなどを使用して制作することになります。制作した定款は、本店所在地を管轄している法務局もしくは地方法務局の所属している公証役場で認証を行ってもらえます。
定款の認証が終われば資本金の払込みを行いましょう。ここで注意が必要なのは、資本金を払い込む段階ではまだ会社が存在していないため、発起人の個人名義で銀行口座を利用しなければならないことです。また、資本金の振込を行う場合には特に以下のことに注意が必要です。
これらのことに注意し、資本金の払い込みを行うようにしましょう。
上記のことが終われば登記申請を行いましょう。登記申請は、「登記すべき事項」を紙面もしくはデータに記録しているものと「登記申請書」に添付書類を合わせて製本したものを、法務局へ提出する必要があります。なお、登録免許税が必要になるので注意しましょう。
個人事業主がそれまで行ってきた個人事業を法人化することを、「法人成り」と呼びます。一般的には法人成りすると上記でも解説したように信用が高まったり税金対策が行いやすくなるというメリットがあります。しかし、法人化したいと思っていてもどのようなタイミングで法人成りすれば良いのか分からない方も多いでしょう。そこで、以下では法人成りするために適したタイミングについて具体的に解説していきます。
法人成りをするタイミングとしては、売上高に着目する方法があります。売上高は消費税の納税義務者になるかどうかについて関わっており、もし2年前の売上高が1,000万円を超えている場合には一部の例外を除いて納税の義務が発生することになります。しかし、法人化を行うことでこの消費税を納める時期を2年ほど先送りにすることができるため、売上高を見計らって法人成りするというのも選択肢の1つでしょう。
利益額に着目する方法も、法人成りするための判断基準として有効です。個人事業主であれば累進課税率が採用されているため、事業から生じている利益が同じであるとしても、個人事業主と法人では支払う税金が変わってくるのです。そのため、税負担を考慮して法人の所得に対する税率よりも、個人事業の所得に関する税率が上回った時に法人成りをすることが適切なタイミングと言えるでしょう。一般的には、個人事業としての利益が800万円を上回る時が法人成りに適したタイミングと言われます。このことも参考にされると良いでしょう。
この他にも、繁忙期のタイミングで法人化する方法もあります。売上が伸びる時期に法人成りをすることによって節税効果も高めることができるため、その時期に法人化される方も多いです。ただし、この場合には忙しい時期にさらに法人化の手続きも併せて行う必要があるため、非常に忙しい状態になってしまうことになります。もしこのようなタイミングで法人化することを考える場合には、逆算してあらかじめ書類などを準備しておくようにしましょう。
このように、会社を設立する場合にはそのメリット・デメリットや手続き方法などを踏まえた上で判断する必要があります。現在個人事業主の方であれば、法人化することで税金面でのメリットが受けられる反面、事務作業の工数が大きく増えることも知っておきましょう。もし法人化することを決めているという方は、この記事の内容を参考に、あらかじめ手順や設立のタイミングをよく理解しておきましょう。
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